ウイングスパンを放出する理由
『2019年ドイツ年間ゲーム大賞のエキスパート部門大賞』を受賞したボードゲーム、ウイングスパン。
美しい170枚もの鳥カード、巣箱の形をしたダイストレイと魅力満載、しかもドイツゲーム大賞を受賞しているなら、面白さもお墨付きでしょ!と意気込んで予約購入。
しかし・・・4回遊んで、早くも放出することにしました。
あくまで
2人プレイに限った個人的意見ですが、放出の理由を書いてみたいと思います。
この個人ボードを見た瞬間、何をするゲームなのかわかります。
鳥カードをなるべくたくさん個人ボードに並べること。(←カードは上から順に「森林」「草原」「水辺」のエリアを表しており、鳥カードは左詰めに配置します。=並べれば並べるほど、アクションが強くなる)
しかも、鳥カードには勝利点が書かれていて、最終的にはその勝利点を足し合わせることになるので、カードは出せば出すほど良い。
(勝利点が0点の鳥もいますが、その分卵をカード上に乗せることで得点化できるので、やっぱり0点でもカードは並べた方が良い)
- 左上に書かれているのが「生息地」。アメリカトキコウなら、水辺エリアのみに配置できます。ナゲキバトは森林・草原・水辺どのエリアにでも配置可能。
- 「生息地」の下に書かれているのが「食べる餌の種類と個数」。アメリカトキコウは魚+げっ歯類+「どの種類の餌でも良いのでさらに1個」=合計3個の餌を支払うことで、個人ボードにプレイできます。ナゲキバトは穀物1個でOK。
- その下にある羽マークの横に書いてある数字が「勝利点」です。
- その下が「この鳥が作る巣の種類」。
- 一番下が「この鳥が持つことのできる卵の数」。この数を超えて、カード上に卵を配置することはできません。=カード上に配置された卵1個につき1点。
カードをたくさん並べるためには、「なるべくプレイ(=カードをボード上に並べる)コストが安いカードを序盤にGETすること」が大切です。
そのため、初期カードが「高プレイコスト=餌3つ必要」ばかりだと、高確率で身動きが取れなくなります。
(↑まずは水辺エリアの「鳥カードの獲得アクション」でコストの安い鳥カードを取ることになりますが、その間に相手プレイヤーに餌ひとつでプレイできるカードを2~3枚個人ボードに並べられてしまうと、かなり出遅れます)
次に目的カードです。
ゲーム終了までに、このカードに書かれた目的を達成することで、得点になります。
ゲーム開始時に2枚引いて、そのうち1枚を選びます。
しかし、この4枚のような「え・・・全体の9%や15%しか存在しないの?」という目的カードばかり引いてしまった場合、これもとても苦しい。
そして鳥カードの中には、
プレイコストに対して、バランスがぶっ壊れた強カードがあります。
代表的なのがこの3枚。カラス2枚は文句なしの最強カードです。
卵を1個捨てれば、好きな種類の餌をGETできる!ええー?!
アメリカササゴイはカラスには劣りますが、「発動すれば、果実を得る」や「無脊椎動物を得る」といった餌を得るカードとのコンボが決まれば無敵です。
しかも、勝利点も高い!それなのに、プレイに必要な餌が2種類(or1種類)だけで良いってどういうこと?
これを序盤に相手プレイヤーに出されると、ほぼ勝てません。
ここまで強カードでなくても、例えば
この、共通在庫から特定の餌をGETする系カード。
これも単独でメチャクチャ強い。コンボすると止められない。
しかも、カード勝利点が低くない!
普通は効果の強いカードは勝利点が低く抑えられていることでバランスをとるものだけれど、そうなっていない!!
共通在庫は0にならないので、発動すれば必ず餌をGETできる。
「餌箱から餌をGETする系」は、特定の餌が餌箱にないこともあるので、必ずGETできるわけではない・・・けれど、やっぱり強い。
そして、他の鳥カードに卵を置く系。
発動すれば、必ず1個卵を産む=1点。
え?強すぎない?しかもプレイコスト安っ!!
カード単独の勝利点はやや抑えられているものの、序盤に出せば激強。
↑そして引けさえすれば、序盤に出せてしまう。
低コストで序盤に強いカードを出せた人が勝つ。
カードが引けるかどうかは運次第。
なので、自分でエンジンを構築している手応えが薄いのです。
そして個人的にとても辛いのが、
相手が強カードを手に入れるのを、阻止する方法がないこと。
指をくわえて見ているだけです。
・・・全般に、カードの能力調整が雑な印象です。
本来であれば、
ラウンド毎に登場するカードを分けるべきだと思います。
(効果が強いカードは3ラウンド以降でないと登場しない等)
「プレイコストは低いが、効果も弱いカードが1ラウンド→後になるほど、徐々にプレイコストが重くなるが、効果は強い」
とした方が、自然だしバランスが取れます。
なぜ作者がそうしなかったのか、謎です。
もしくは、「水辺の王者」や「草原の雄」「森林の覇者」みたいなキーカード(=戦略の鍵になるカード)をプレイ開始時に1枚だけ選び、担当を決める(→テラフォーミングマーズの企業カードみたいに)
目的カードは4枚引いて、その中から自分のキーカードに合ったものを2枚選ぶ。
とするか・・・。
得点力の高いキーカードはざっと見ただけですが、10枚程度だと思うので、得点の核になるカードを初期手札として分配すれば、カード引き運による不公平は若干軽減されると思います。
ただ、キーカードをプレイヤー自身が選び出すのは苦痛&そこまでしてしまうと別ゲームになるので、断念しました。
ユニークカード満載という共通点から、テラフォーミングマーズを引き合いに出します。
テラフォーミングマーズは奇跡的なカードバランスですが、それには理由があって、カード作成基準が明確だからです。
「カード1枚の価値=クレジット=金に換算したとき、いくらになるか?」
ひとつの基準で全カードが貫かれているため、拡張でカードが何枚増えようが、ゲームバランスは崩れません。
ウイングスパンのカードは見た目は美しいですが、残念ながら、「カード全体を貫く明確な基準がない」ように思えます。
カードゲームはバランスが命。
しかも、カードの回転率が下がる2人プレイでは、余計に1枚のカードの強弱が勝敗に直結します。
加えて、テラフォはカードドラフトが推奨されています。
山札からカードを引くだけでは、運まかせになるからです。
ドラフトすることで、相手に有利になるカードをカットすることができる。
これは大きい。
ウイングスパンでも、カードドラフトができないか?とも考えました。
ドラフトするとしたら初期手札5枚の段階ですが、それには大して意味がありません。
①初期で手持ちの餌は5つしかなく、手に入れたカードの数だけ破棄する必要がある。そのため5枚全部のカードを手元に残すのは現実的ではない。
②早くカードをプレイすることがアクションの強さに直結するゲームシステム上、プレイコストの安いカードを手元に残したい。
「後々プレイしたい」と高コストカードを手元に残すのはリスキーなのです。
初期手札をドラフトした結果何が起こるかというと、「安いカードの取り合いになる」だけです。
相手の手札を見ることができますが、それで戦略を練るのはあまり意味がありません。
ウイングスパンの初期手札は5枚だけ。
手元に残るのは、せいぜい2~3枚。
「長期的な戦略を練るには数が少なすぎる」のです。
テラフォのカードドラフトは、ターンごとに行います。
「ターンごと」というのがミソで、戦略が見えてきたところで、相手の欲しいカードをカットできる。
相手の思惑を阻止する&カードの偏りをなくすのがドラフトの意義ですが、ウイングスパンにはそのどちらの仕組みもありません。
・・・せっかく購入したゲームだから、楽しく遊びたかった・・・残念無念です。
エキスパート部門受賞作という理由で購入し、我が家のプレイスタイルも戦略重視なので辛い評価になっていますが、ファミリーゲームとしてなら、むしろ実力差があってもカード運で勝敗をひっくり返すことができるので、楽しめると思います。
決して悪いゲームではないですよ。